溶融亜鉛めっきは鉄を錆から守る手段として、非常に経済的で、優れた防食性能を有しています。塗装や電気めっきとは異なり、亜鉛と鉄が金属結合しているため、密着力が強く剥離の心配がありません。以上から、様々な分野で溶融亜鉛めっき加工が採用されています。
溶融亜鉛めっきは「保護皮膜作用」と「犠牲防食作用」の2つの防食機能があります。
溶融亜鉛めっきは酸素や水分等と反応し、めっき表層に腐食生成物が形成されます。この腐食生成物はやがて、薄く緻密な不働態被膜となり、溶融亜鉛めっきの摩耗を低減します。
溶融亜鉛めっきは、皮膜が局部的に欠損して鉄が露出した場合でも、きずの周囲の亜鉛が鉄より先に+イオンとなり溶け出すため、電気化学的に鉄の腐食を抑制します。この犠牲防食作用は、塗装や他のめっきにはない、優れた特徴です。
溶融亜鉛めっきは、大気中の耐食性に優れ、同一条件で使用される場合の耐食性は膜厚にほぼ比例します。
大気中での耐用年数は使用環境に大きく依存し、表1のように優れた耐食性を有します。
耐用年数は亜鉛付着量を350g/m2として、めっき皮膜の90%が消耗するまでの期間で計算した値です。屋内では同じ地域の屋外に比べると、5倍以上の耐用年数が期待できます。
耐用年数 = 亜鉛付着量 x 0.9 / 腐食速度
表1.使用環境別溶融亜鉛めっきの腐食速度
暴露環境 | 平均腐食速度 (g/m2/年) |
耐用年数 (年)※ |
---|---|---|
海岸地帯 | 19.6 | 16 |
都市地帯 | 8.0 | 39 |
田園地帯 | 4.4 | 72 |
※耐用年数は条件により異なり、表中の数値は目安です。
亜鉛は水中で水酸化亜鉛の保護皮膜を形成するため、水中での耐食性も優れています。
この保護被膜は水のpHと温度に大きく依存し、pH6.5~12、水温40℃以下の条件下で優れた耐食性を有します。
表2.pHと亜鉛腐食速度の関係